スリランカの旧首都コロンボには数多くの仏教寺院がありますが、中でもひときわ人気を集めているのがガンガラーマ寺院です。コロンボ市内最大級の寺院として知られ、毎年2月に盛大な仏教行事が開催されることでも有名です。


ベイラ湖のほとりに位置し、19世紀末に建立された歴史ある寺院で、伝統と現代文化が融合した独特の雰囲気を放っています。



地元の人々の厚い信仰を集める一方で観光客にも開かれており、都会の喧騒から離れて仏教文化に触れられる癒しのスポットとして人気です。
今回は、そんなガンガラーマ寺院の魅力を歴史・建築・アクセス情報から見どころまでたっぷりとご紹介します。
ガンガラーマ寺院への行き方と基本情報


所在地:
61 Sri Jinarathana Road, Colombo 2, Sri Lanka(コロンボ市中心部・ベイラ湖の南側)
アクセス:
コロンボ市街地に位置しアクセスは良好です。コロンボ・フォート駅やガレフェイスグリーンから車やトゥクトゥク(三輪タクシー)で約10分。周辺には大型ショッピングモール「コロンボ・シティセンター」や有名ホテルもあり、観光の合間に立ち寄りやすい立地です。
ガンガラーマ寺院とは?コロンボ随一の仏教寺院
ガンガラーマ寺院(Gangaramaya Temple)は、スリランカ最大の都市コロンボ中心部にある仏教寺院です。


ベイラ湖畔の静かな環境に佇み、19世紀後半の1885年頃に高僧ヒッカドゥウェ・スリ・スマンガラ師によって創建されました。当時イギリス植民地支配下で衰退しかけていた仏教復興の機運の中、コロンボ市内に増加する仏教徒のための信仰の場として建設が始まったのが起源です。



その後、スマンガラ師の弟子デヴァンデラ・スリ・ジナラタナ師が寺院の運営を引き継ぎ、さらに後継の高僧たちの尽力で、単なる礼拝所に留まらず教育・文化の中心地として発展してきました。



現在ではコロンボを代表する由緒ある寺院として、国内外から多くの参拝者・観光客が訪れる人気スポットとなっています。
建築面でもガンガラーマ寺院は他に類を見ない個性を持っています。寺院の建築様式は非常にエキレクティック(折衷的)で、スリランカ伝統の様式を基調としながらもタイやインド、中国に西洋のデザインまでも巧みに取り入れています。
この多文化的な要素の融合により、寺院全体が独特の雰囲気を醸し出しており、訪れる人々を魅了します。また敷地内には本堂(ヴィハーラ)や仏塔(チェーティヤ)、菩提樹、僧侶の集会所であるシーマ・マラカヤ堂、そして仏陀の遺物を祀る舎利堂など主要な寺院構造が一通り揃っています。



さらに付属施設として博物館や図書館、僧侶のための学校(仏教学院)や施粥所まで備えられており、単なる礼拝所の域を超えた複合的な寺院となっています。
寺院の入口に立つ2体の中国の武神像(関羽像)は訪れる人々を出迎えるシンボルで、その足元には小象が飼われていることもあり異国情緒たっぷりです。


こうした点からも、ガンガラーマ寺院が宗教の枠を超えて多文化交流の場ともなっていることが感じられるでしょう。
【ガンガラーマ寺院の本堂内部。極彩色の大仏や無数の仏像が並び壁画も天井も鮮やかな装飾で埋め尽くされている】




ガンガラーマ寺院は「お寺の中に博物館がある」と形容されるほど、内部に所狭しと貴重な収蔵品が展示されている点も大きな特徴です。本堂に一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込むのは極彩色の巨大な座仏と、その周囲を取り囲む無数の小仏像や壁画です。
スリランカ様式の仏像だけでなく、タイ・ミャンマー・中国・日本など諸外国から寄贈された多種多様な仏像コレクションが並ぶさまは圧巻で、その数は大小数百体にも及びます。中には白色の翡翠(ヒスイ)で作られた珍しい仏像や、タイから贈られたエメラルドグリーンの仏像といった他ではお目にかかれない貴重な像も含まれています。



さらに本堂中央部には金色に輝く小塔(仏舎利塔)が安置されており、その内部にはなんとゴータマ・ブッダの遺髪が奉納されています。





この「仏陀の髪の毛の遺物」は通常は金庫に厳重に保管され滅多に公開されない秘宝ですが、2月の祭礼時など特別な機会に姿を現すこともあるそうです。
そのほか境内を見渡すと、大きな菩提樹の下で熱心に祈りを捧げる人々の姿が目に入ります。仏陀が悟りを開いた聖なる菩提樹の子孫にあたる樹で、参拝者にとっては特に重要なスポットです。


また本堂奥には高さ1メートルにも満たない極小サイズの仏像がガラスケース内に展示されており、付属の虫眼鏡を通して細部まで観賞できるユニークな趣向もあります。





寺院内の随所には対になった巨大な象の牙(牙そのものは本物)や、ヒンドゥー教の神シヴァ(舞踏するナタラージャ像)など仏教以外の美術品まで飾られており、まさに宗教美術の宝庫です。



極めつけは博物館さながらの骨董コレクションでしょう。本堂と繋がる展示館には、各国の貨幣、宝石類、古い柱時計やラジオ、タイプライター、秤(はかり)といった年代物の日用品、歴代高僧ゆかりの品々など、寺院とは思えないほど多彩な収蔵品がぎっしりと並んでいます。
中でも来訪者を驚かせるのは往年の高級車で、なんと境内には古めかしいロールスロイスのクラシックカーまで展示されているのです。
これらは寺院に寄進された品々であり、雑多ながらもスリランカと世界各地との交流の歴史を物語っています。ただ展示品に関する説明書きはほとんど無いため、あらかじめ背景知識を仕入れておくと一層楽しめるでしょう。
ガンガラーマ寺院の歴史
ガンガラーマ寺院の創建は19世紀末、イギリス植民地時代のスリランカにおける仏教復興期まで遡ります。
当時、仏教指導者の一人であったヒッカドゥウェ・スリ・スマンガラ長老がコロンボ市内の信徒受け入れの必要性を感じ、1885年頃に現在の場所にあった小さな祠を基に寺院建設を開始しました。
スマンガラ師の弟子であるデヴァンデラ・スリ・ジナラタナ長老がその意思を継ぎ、礼拝の場であると同時に仏教教育や文化活動の拠点ともなる寺院へと発展させていきます。20世紀に入ってからも歴代住職たちの尽力で伽藍の整備が進められ、現在見られるような壮大な堂宇群が形成されました。



第二次世界大戦後から現代にかけてもガンガラーマ寺院はコロンボ仏教界の中心として機能し続けています。



現在の住職であるガルボダ・ニャーニサラ長老(通称ポディ・ハムドゥルウォ)は16歳の若さで寺院運営を任されて以来、数十年にわたり寺院の発展と社会奉仕に努めてきた人物です。
寺院は孤児院や高齢者支援、職業訓練校の運営など様々な慈善事業にも関わっており、地域社会に深く貢献しています。またガンガラーマ寺院は他宗教に対しても寛容で知られ、かつてシーマ・マラカヤ堂の再建に際してムスリムの篤志家が資金提供を行ったエピソードは有名です。
仏教の教えに基づき、宗教や民族の壁を越えて人々を受け入れる姿勢もこの寺院の大きな魅力と言えるでしょう。
ナワム・ペラヘラ祭り(2月)
ガンガラーマ寺院を語る上で欠かせないのが、毎年2月の満月の日(ナワム・ポヤデー)に行われる盛大な仏教行列 「ナワム・ペラヘラ祭り」 です。


ペラヘラとはスリランカ各地で行われる仏教の伝統的パレードのことで、キャンディのペラヘラが有名です。





コロンボではこのガンガラーマ寺院のナワム・ペラヘラが最大規模となります。
1979年に始まったとされるナワム・ペラヘラ祭りでは、色鮮やかな衣装をまとったキャンディアン・ダンサーや伝統楽器の鼓笛隊、火の玉を操る演舞団などが市中を練り歩き、寺院の象も荘厳な飾り付けを付けて行列に加わります。
この祭りのハイライトは、寺院に伝わる仏舎利(仏陀の遺物)を載せた豪華な象が登場する場面で、聖なる遺物に敬意を表するため多くの僧侶たちも列に参加します。
ナワム・ペラヘラはコロンボの夜を彩る一大行事であり、地元の人々だけでなく世界中から観光客が詰めかける人気イベントです。もし2月にコロンボを訪れる機会があれば、ぜひこの壮麗な祭典を体感してみてください。
まとめ:ガンガラーマ寺院でスリランカ仏教文化を体感しよう
今回のポイントをまとめると以下となります。
- ガンガラーマ寺院はコロンボ中心地に位置しアクセス至便。湖畔の穏やかな環境で心落ち着くひとときを過ごせます。
- 19世紀末創建の歴史ある寺院で、仏教復興期から現代まで地域の信仰・文化の中心として発展してきました。
- スリランカやアジア諸国の建築様式を融合した独特の堂宇や内装は必見。極彩色の本堂や水上寺院シーマ・マラカヤなど見どころが豊富です。
- 境内には数百体の仏像や貴重な仏教遺物が納められ、博物館さながらのコレクションを楽しめます。仏陀の遺髪や象の牙といった珍しい展示もあります。
- 毎年2月のナワム・ペラヘラ祭では象も登場する盛大なパレードが開催され、伝統文化に触れられる貴重な機会となっています。
- 服装や礼儀など基本マナーに気をつければ、誰でも気軽に訪問・参拝可能です。現地では僧侶やスタッフも親切に対応してくれるため安心して観光できます。
スリランカ・コロンボを訪れた際は、ぜひガンガラーマ寺院に足を運んでみてください。
歴史と文化が詰まったこの寺院での体験は、きっと旅のハイライトの一つになることでしょう。仏教国スリランカの精神に触れ、心洗われるひとときを過ごせるガンガラーマ寺院は、きっとあなたにとって特別な思い出となるはずです。ゆったりとした気持ちで参拝し、スリランカ仏教文化の奥深さを存分に体感してください。