スリランカ最南端の街マータラは、首都コロンボから約160km離れた南部州の港町です。

ゴールやヒッカドゥワほど観光地化されていない分、のんびりとしたローカルな雰囲気が魅力で、熱帯の海辺の暮らしを体感できる穴場的存在です。
街には16~18世紀のポルトガル・オランダ統治時代の名残があり、要塞や教会など歴史的建造物が点在しています。さらに仏教寺院や美しいビーチも多く、文化と自然が調和したマータラは、日本人個人旅行者にもぜひ訪れてほしいエリアです。
マータラってどんな街?基本情報まとめ
スリランカ最南端の地方都市
マータラは南部州マータラ県の県都で、コロンボに次ぐ商業の主要ハブ都市の一つです。

人口約5万人ほどの規模ですが、周辺地域の中心地として賑わい、活気ある市場やショップ、本格的なレストランなども揃っています。
2004年のスマトラ沖地震では大津波により深刻な被害を受けましたが、現在は完全に復興し、街は日常を取り戻しています。
歴史と文化
マータラは古くはシンハラ王朝時代に「ルフナ」と呼ばれる南部領域の一部でした。
市内中心には古代の王が建立した寺院があり、地元の仏教徒にとって重要な聖地となっています。16~18世紀にはポルトガル・オランダに支配され、当時築かれた石造りの城壁や要塞、オランダ教会などの建築物が今も残り、街並みに歴史的な趣を添えています。
例えばオランダ統治期に建てられたスター要塞(星形要塞)は現在博物館として公開されており、植民地時代の軍事建築を見ることができます。

自然と風景
マータラはインド洋に面した海辺の街で、周囲にはヤシの木が茂る稲田や茶畑も広がる風光明媚な土地です。市街地はニルワラ川の河口の小半島上に位置し、川と海に挟まれた景観が特徴です。
市内にはパラヴィドゥワ寺院という小島の上のお寺がシンボル的に佇み、青い海と空に白い仏塔が映える美しい景色を作り出しています。

マータラへの行き方【アクセス】
マータラへのアクセス方法はいくつかありますが、中でもタクシーチャーターが最も便利でおすすめです。ここではコロンボ方面から向かう場合を中心に、主な行き方と所要時間・費用の目安を比較してみましょう。
交通手段 | 所要時間の目安 | 料金の目安 | 特徴・メリット |
---|---|---|---|
タクシーチャーター 貸切車 | 約2.5~3時間 高速道路利用 | 10,000円〜15,000円/日 | ★一番おすすめ! 高速道路で快適・最速。ドアツードアで荷物が多くても安心。途中で寄り道観光も可能。 |
長距離バス 高速バス | 約2~2.5時間 | 約1,000~1,200ルピー 約500円〜600円 | 冷房付き大型バスで快適。安価だがコロンボのバス発着所まで行く手間あり。満席の場合もある。 |
鉄道 コーストライン | 約3.5~4時間 | 約300~400ルピー 約150円〜200円 | コロンボ~マータラ間は鉄道の終点。海沿いの車窓は風情あるが、本数が少なく所要時間長め。 |
ローカルバス 一般道 | 4~5時間以上 | 約600ルピー前後 約300円 | 最安だが各駅停車で時間がかかる。車内も混雑しやすく観光向きではない。 |
タクシー利用のメリット:
コロンボ市内や空港から直接マータラまで向かうなら、専用車チャーターが断然スムーズです。南部高速道路(E01)が2014年にマータラまで延伸開通しており、道路状況は良好。渋滞の少ない高速経由なら約160kmの距離を2~3時間程度で到着できます。バスや電車と比べ多少高額になりますが、複数人で割り勘すれば一人あたりの負担は抑えられますし、エアコン付き車内で快適に移動できます。途中でゴールやウェリガマなど他の観光地に立ち寄る柔軟なプランも可能なので、時間を有効に使いたい個人旅行者にはタクシーチャーターが最適でしょう。
日本から事前に予約できるので、コロンボのバンダラナイケ国際空港からスムーズに旅を始めることができます。以下でおすすめのタクシーチャーターをおすすめしていますので参考にしていただければと思います。

バスで行く場合:
コロンボからは高速バスが頻発しており、ペター地区のバスステーションから乗車できます。乗車券はバス車内で購入し、料金は片道だいたい1000ルピー程度です。所要は2時間少々で、途中休憩なしで一気にマータラのバスステーションまで直行します。車内は基本的に冷房完備で快適ですが、満席だと立つ可能性もあります。またコロンボ中心から少し離れた高速バス発着所(マクンブラ新バスターミナル)発の便もあり、そちらは渋滞を避けて約2時間で着くケースもあります。安く早く移動したいなら高速バスは有力な選択肢です。
鉄道で行く場合:
コロンボ・フォート駅から海岸沿いを南下するコーストライン鉄道の終点がマータラ駅です。途中ゴールなど主要都市を経由し、各駅停車で約4時間ほどかかります。3等席なら数百ルピーと格安で、窓からインド洋を眺めるローカル鉄道の旅も風情があります。ただし本数が1日5~6本程度と少なく、時間帯も限定されるため、鉄道旅が好きな方向けでしょう。なおマータラ駅は市街地中心からやや離れた場所にあるため、駅から宿への移動はタクシーやトゥクトゥク利用が必要です。
マータラ市内の見どころ:歴史と寺院の街歩き
マータラ市内には、植民地時代の史跡や地元の人々の信仰を集める寺院、美しいビーチなど見どころが数多く点在しています。街自体は大きくありませんが、徒歩やトゥクトゥクで回りながら歴史散策と寺院巡りを楽しめます。以下にマータラ中心部でぜひ訪れたいスポットを紹介します。
マータラ要塞(オランダ要塞)
17世紀オランダ統治時代に現在の形に再建された海沿いの要塞で、ニルワラ川河口の半島全体を囲むように石造りの城壁が残っています。城壁の上は自由に歩け、インド洋と街並みを見渡せる絶好の散策コースです。
要塞内には1767年改修のオランダ教会や古い鐘楼、砲台跡など歴史的建物が点在し、当時の面影を感じられます。入口近くには時計塔も立っており、オランダ統治期の雰囲気を今に伝えるエリアです。
スター要塞
マータラ要塞から橋を渡って川向う西岸にある小さな星形の要塞跡です。


1761年の反乱後にオランダが本要塞防衛のため建設し、1765年に完成しました。星型のユニークな形状から「スター要塞」と呼ばれ、現在は博物館として一般公開されています。
内部ではオランダ時代の大砲や調度品などが展示され、歴史好きには興味深いスポットです。
パラヴィドゥワ寺院(小島の寺院)
マータラの象徴ともいえる、美しい小島の上の仏教寺院です。市内中心(バスターミナル前)の海岸から細い吊り橋で渡れるピジョンアイランド上にあり、海に浮かぶその姿は思わず写真に収めたくなる光景。

もともと島へ渡る旧吊り橋は2004年の津波で流失しましたが、その後2008年に架け直されました(※老朽化で一時崩落し2023年に新橋が再建されています)。
島内は緑に囲まれた小さな庭園になっており、本堂には大小様々な仏像が安置されています。また聖山スリーパーダ(アダムスピーク)の仏足石レプリカも奉納されており、地元の信仰を集める静かな参拝スポットです。吊り橋の上や島からはマータラの海岸線を一望でき、街歩きの合間のちょっとした観光にぴったりです。
マータラの仏教寺院巡り
パラヴィドゥワ寺以外にも、市内にはいくつか立ち寄りたいお寺があります。街中心部にあるマータラ・ボードヒヤ(菩提樹寺院)は聖なる菩提樹を祀る寺院で、地元の人々がお祈りに訪れる姿が見られます。
また、市街地から東へ約6kmの所にはウェヘラヘナ寺院があります。高さ数十メートルにも及ぶ巨大な座仏と、2万枚を超える極彩色の壁画で有名な仏教寺院で、その独特な迫力は一見の価値ありです。
20世紀初頭に建立された比較的新しいお寺ですが、内部の壁画は仏陀の一生をコミカルなタッチで描いており、仏教美術に興味がなくても楽しめます。寄付をすると自分の名前と出身国を寺に記してもらえるユニークなサービス(2018年時点)もあり、旅行者にも親しまれています。
ポルヘナ・ビーチ
マータラ市街から西へ約2~3kmに位置する穴場ビーチです。沖合にサンゴ礁が広がるおかげで波が穏やかで遠浅のため、地元では「一番安全なビーチ」として人気があります。

天然の海水プールのような感覚で泳げ、シュノーケリングをすればウミガメや熱帯魚にも高確率で出会えます。白い砂浜と透明度抜群の水質は南部有数で、泳ぎが苦手な人やお子様連れにも最適です。
更衣施設やビーチ沿いの売店・ローカル食堂もあり、週末は家族連れで賑わいます。マータラ滞在の際は是非ポルヘナで南国の海遊びを満喫してください。
マータラ周辺の見どころ:南部観光のハイライト
マータラを拠点に足を延ばせる周辺スポットも魅力的な場所が揃っています。特に有名なのがホエールウォッチング(鯨観察)や南端の絶景スポット。いくつかピックアップしてご紹介します。
デウンダラ岬(Dondra Head)
マータラ中心地から東へ約5km、スリランカ本島の最南端に位置する岬です。シンハラ語で「神々の都」を意味するデウンダラは、古来よりヒンドゥー教と仏教の両方の聖地とされ、多くの寺院が建っていました。
残念ながら植民地時代にそれらの寺院の多くは破壊されてしまいましたが、その代わりにデウンダラ灯台が建設されました。1890年にイギリス人によって建てられた真っ白な灯台で、高さ約50mとスリランカで最も高い灯台でもあります。青い海とヤシの木を背景にそびえるその姿はフォトジェニックで、南国らしい絶景として人気です。
また岬周辺にはヴィシュヌ神を祀るウタパラワナ寺院や、大きな坐像が目を引くデヴィヌワラ仏教寺院など見応えある宗教スポットも点在しています。
岬近くのフマナビーチという小さな砂浜からは灯台を望むことができ、水質も澄んでいて地元の穴場ビーチになっています。マータラまで来たら、このスリランカ最南端の地にもぜひ足を運んでみてくださいね。
ミリッサ(Mirissa)
マータラから西へ約10km、車で15~20分程度の場所にある小さなビーチタウン、ミリッサは南部随一のリゾートビーチです。
ヤシの木が並ぶ弧状の砂浜と透明度抜群の海は「天国に一番近いビーチ」とも称され、多くの外国人観光客やサーファーが訪れます。一年中サーフィンを楽しめる波があり、初心者向けのサーフスクールやレンタルボードも充実しています。
さらにミリッサと言えばホエールウォッチングが有名!

11月~4月頃のシーズン中であれば、ボートツアーで高確率(80~90%)でクジラに遭遇できると言われています。特に12月~3月は世界最大の動物であるシロナガスクジラがこの近海に回遊してくるため、多くの旅行者がミリッサ発の朝のクジラ探しクルーズに参加します。
小さな町ですがホテルやゲストハウス、レストランも豊富で、マータラ観光の宿泊拠点としてミリッサに滞在するのもおすすめです。
ベストシーズンはいつ?マータラの気候と旅行時期
スリランカ南西部に位置するマータラを訪れるベストシーズンは、一般的に乾季にあたる11月~4月頃とされています。特に雨が少なく安定した天候が続く1月~3月は安心して観光を楽しめる時期です。

南西モンスーンの影響で5月~9月は雨量が増え、海も荒れやすくなります。実際、5~7月頃は一日中激しい雨が降ることもあり、ビーチで泳いだりマリンスポーツをするには不向きです。
一方、11月頃から徐々に雨季が明け始め、12月には乾季のピークシーズンに入ります。晴天率が高く海も穏やかになるため、ホエールウォッチングのベストシーズンは12月~4月とされています(この間は高確率でシロナガスクジラに出会えるため、多くの観光客で賑わいます)。
日中の気温は年間通して30℃前後と高く湿度も高めですが、乾季はスコールが少ない分過ごしやすいでしょう。
ただし乾季でも熱帯性のにわか雨は降りますし、夜間は沿岸でも多少涼しく感じることがあります。雨具と薄手の上着は念のため用意すると安心です。
また、ベストシーズン中は国内外から旅行者が増えるため、ホテルが混み合ったり料金が高騰しがちです。タクシーチャーターも予約が集中することがあるので、ハイシーズン(特に年末年始や2~3月)の渡航計画は早めに立てておくと良いでしょう。

まとめ:マータラで南国の魅力を満喫しよう!
マータラは世界遺産の街ゴールほど有名ではないものの、南部スリランカの魅力がぎゅっと詰まった知る人ぞ知る観光地です。
歴史ロマンを感じる要塞跡の散策、地元の信仰に触れる寺院めぐり、そして紺碧のビーチでのんびりリラックス…と、多彩な楽しみ方ができます。
交通の便も南部高速道路の延伸で飛躍的に向上し、コロンボからの移動はタクシーチャーターならあっという間です。もちろん列車やバスを使ったスローな旅も味がありますが、限られた旅程で効率よく回りたい場合は専用車を活用して快適に巡るのがおすすめです。
南の端まで来たからこそ出会える絶景や体験が、マータラには待っています。クジラに出会えたときの感動、新鮮なスパイスカレーの刺激的なおいしさ、穏やかな夕暮れ時のビーチの風景——どれもが旅の思い出を鮮やかに彩ってくれるでしょう。ぜひ次のスリランカ旅行では、マータラを旅程に加えてみてください。素朴で温かな南部の人々との触れ合いとともに、心に残る素敵な時間を過ごせるはずです。