スリランカ北中部に位置するアヌラーダプラは、約2500年前に建設された同国最古の都であり、仏教の聖地として名高い世界遺産の街です。

広大なジャングルの中に点在する古代遺跡群は悠久の歴史を物語り、現在も多くの巡礼者が訪れる神聖な場所となっています。
女性の一人旅からバックパッカー、家族連れやシニア旅行者まで、それぞれのスタイルで楽しめる魅力にあふれるアヌラーダプラ。



この記事では、アクセス(移動手段)から歴史背景、現地で体験したい観光スポット、グルメ情報やお土産のヒントに至るまで、アヌラーダプラ観光に必要なポイントを網羅してご紹介します。
スリランカの豊かな文化に触れつつ、安心して旅の準備ができるよう徹底解説しますので、ぜひ参考にしてください。


アヌラーダプラへのアクセス
アヌラーダプラへは首都コロンボから約200kmの距離があります。



主な移動手段としては鉄道・バス・タクシーチャーター(専用車)の3つがあり、それぞれ所要時間や快適さが異なります。ここでは各アクセス方法の特徴と所要時間、料金の目安を解説します。
旅行の予算や同行者(子連れやご年配の方など)、旅のスタイル(バックパッカーか快適重視か)に合わせて最適な方法を選びましょう。


コロンボからアヌラーダプラへ鉄道で行く


かつてはコロンボ発アヌラーダプラ行きの直通列車が運行しており、渋滞のない鉄道移動は時間も正確で快適な手段でした。しかし現在(2025年)直通列車は線路改修のため一時運休中で、コロンボ~マーホ駅間のみの運行となっています。
そのため鉄道のみでアヌラーダプラへ行くことはできず、途中からバス等への乗り換えが必要です。



鉄道+バス併用ルートとしては、まずコロンボのフォート駅から早朝5:45発または午後15:05発の列車に乗り、約3時間でマーホ(Maho)駅へ向かいます。
列車は1等エアコン席(約2000ルピー)と2等指定席(約1200ルピー)などがあり、2等でも十分快適です。
マーホ駅到着後、駅から約6km離れた「ダラダガマ」というバス停までトゥクトゥク(三輪タクシー)で移動し(所要6分・料金目安300ルピー)、そこから57番の路線バスに乗り換えて約1時間半でアヌラーダプラ市内に到着します。



乗り継ぎ含めた所要時間は約5時間で、外国人バックパッカーには鉄道旅情とバスのローカル体験を両方味わえる方法です。ただし多少手間がかかるため、荷物が多い家族連れやご高齢の方には不向きかもしれません。
バスでの行き方(コロンボ~アヌラーダプラ)
長距離バスは鉄道運休中の現在、主要な公共交通手段です。コロンボ市内の私営バスターミナル(ペター地区のバスティアン・マーワタ・バスターミナル)からアヌラーダプラ行きのバスが出ています。
大きく分けてエアコン付き高速バス(ACバス)とローカルバスの2種類があります。エアコン付きのマイクロバス(いわゆるACバス)は本数が少ないものの、途中停車も少なく速度も速いため最短約4時間で到着します。



料金はおよそ1250ルピー前後と格安で、所要時間と快適性のバランスが良い方法です。ただし席数が限られるため、乗り場で長時間待つ可能性や、満席で乗れないリスクもあります。
特に女性の一人旅の場合、長時間バスターミナルで待つのは不安もあるかもしれません。午前中早めに行っておく、荷物の見張りに注意するなどの対策をとりましょう。



一方のローカルバスは大型のノンエアコン車両で、頻繁に停車し乗客を乗せながら走ります。運賃は数百ルピー程度と非常に安いですが、所要時間は5~7時間と長めです。
車内は混雑することも多く、暑さや揺れもあるため、体力に自信のあるバックパッカー向きでしょう。長時間の乗車はお子様連れやシニア世代には負担が大きいので、あまりおすすめできません。
コロンボから乗る際は、行き先表示板にシンハラ語で「アヌラーダプラ(අනුරාධපුර)」と書かれたバスを探しましょう。迷ったら駅や周囲の人に「アヌラーダプラ?」と尋ねれば教えてもらえます。



なお途中でトイレ休憩が入ることもありますが、水分補給や防寒(エアコンが効きすぎる場合あり)対策をお忘れなく。


帰りのアヌラーダプラ発コロンボ行きバスは、新市街のオールド・バススタンド(旧バスターミナル)からのみ出発する点に注意してください。帰路もACバス利用なら約4~5時間、ローカルなら6~7時間以上かかります。スケジュールには余裕を持たせましょう。


タクシーチャーター(専用車)で快適に移動


プライベートなタクシーチャーター(専用車)は、多少コストはかかりますが快適性と柔軟性では群を抜いています。


コロンボ市内や空港から運転手付きの車を1日貸し切れば、所要約4~5時間で直接アヌラーダプラまで行くことができます。



途中でトイレ休憩や食事、観光スポット立ち寄りも自由自在です。大きな荷物があってもトランクに積めますし、小さな子連れの家族や足腰に不安のあるシニア層でも安心して移動できます。
料金の目安は車種や交渉次第ですが、コロンボ~アヌラーダプラ間の片道で約80~100米ドル程度(1万5千~2万スリランカルピー台)が相場です。
日本円にして1人あたり数千円で快適な移動が買える計算になるため、グループ旅行で割り勘にすれば意外とリーズナブルです。現地の旅行代理店やホテルで手配でき、英語を話せるドライバーが多いのでコミュニケーションも比較的容易でしょう。
女性一人旅の場合でも、評判の良いドライバーに当たれば道中ガイドのように観光解説をしてくれることもあります(ただし必ず信頼できる業者から手配しましょう)。



やはり日本人として、信頼できる業者は日本人が経営しているタクシーサービスチャーターだと思います。口コミなどもみて、検討に必ず入れましょう。


車内でリラックスできるため、到着後すぐ観光したい方や時間を有効に使いたい旅行者にはタクシーチャーターが最適です。
アクセス方法の比較まとめ
各移動手段の特徴を以下の表にまとめました。旅程や予算に合わせて最適な方法を選んでください。
移動手段 | 所要時間(目安) | 料金(目安) | 特徴・メリット |
---|---|---|---|
鉄道+バス併用 | 約5時間 | 列車1200〜2000ルピー+バス数百ルピー | 列車の旅情+ローカル体験だが乗換必要 |
長距離バス(ACバス) | 約4時間 | 1250ルピー前後 | 最速・安価で冷房付きだが本数少ない |
ローカルバス | 5〜7時間 | 数百ルピー | 非常に安いが時間がかかり混雑・疲労大 |
タクシーチャーター | 約4〜5時間 | 約$80〜$100 (要交渉) | ドアツードアで快適・柔軟(複数人なら割安) |
アヌラーダプラ王国の歴史と文化的背景


古都アヌラーダプラは紀元前4世紀頃にシンハラ人の王パンドゥカバーヤによって築かれたとされ、1400年もの長期にわたりスリランカの政治・仏教の中心地として繁栄しました。



当時は王が宝石をちりばめた1000もの部屋を持つ宮殿に住み、街には黄金の尖塔を戴く寺院が林立するなど、高度な文明社会が広がっていたと伝えられています。
この時代の王朝を指して「アヌラーダプラ王国」と呼び、同国史上初めて全島規模の支配力を持った王朝でもありました。



アヌラーダプラが特に神聖視される理由の一つが、仏教伝来の地であることです。紀元前3世紀、インドのアショーカ王の王女である比丘尼サンガミッター(僧伽蜜多)がスリランカに渡り、仏陀が悟りを開いた菩提樹の分け木をこの地にもたらしました。
スリランカの王デーワーナンピヤ・ティッサ(デーヴァナンピヤティッサ)は都に菩提樹を恭敬して植え、ここから島に仏教が広まったのです。
今なお街の中心で青々と茂る「スリー・マハー菩提樹(仏歯樹)」はその木の子孫であり、世界最古の歴史ある樹木とも言われています。





この聖なる菩提樹への信仰が篤いことから、アヌラーダプラは仏教徒にとって一生に一度は訪れたい巡礼地となっています。
長きにわたり繁栄したアヌラーダプラ王国も、度重なる外敵の侵入と内部抗争により次第に衰退していきます。10世紀末から11世紀初頭にかけて南インドの強国チョーラ朝に相次いで占領され、最終的に紀元1017年頃に都は放棄されました。
その後、シンハラ王朝は新都を現在のポロンナルワへ遷しています。密林に埋もれた旧都アヌラーダプラは長らく忘れ去られていましたが、19世紀末にイギリス統治時代の発掘調査で再発見・整備が進められました。
1982年には「聖都アヌラーダプラ」としてユネスコ世界遺産に登録され、現在は遺跡の保存と観光の両立が図られています。



特筆すべきは、古代のアヌラーダプラが残した高度な土木・建築技術です。街の周囲には貯水池(タンク)と呼ばれる巨大な人工湖がいくつも築かれました。これはスリランカ特有のモンスーン気候で安定した農業を行うため、水を乾季に備蓄する灌漑施設でした。
当時の技術者たちは川を堰き止め広大なタンクを建設し、水路網で田畑を潤しました。そのスケールは現在見ても圧倒されるほどで、アヌラーダプラ近郊の「ティッサ・ウェワ」や「カウダッパンクーナ(貯水池群)」などが当時の名残です。



また、後述する巨大仏塔(ダゴバ)や無数の石柱で構成された建造物跡も、古代スリランカの卓越した建築技術を示しています。例えばジェータワナ大塔は当時世界で屈指の高さを誇り、現在もレンガ造建造物として世界最大級です。
こうした遺構の数々は、アヌラーダプラ王国の文化的・技術的な遺産として非常に価値が高いものです。



以上の歴史背景を踏まえると、アヌラーダプラを訪れる際は単なる遺跡観光に留まらず、「なぜここが聖地と呼ばれるのか」「古代の人々が残した知恵とは何か」を感じ取ることができます。
スリランカ人ガイドがいればマハーワンサ(王統史)に記された伝説など興味深い話を聞けるでしょうし、事前に少し歴史を学んで行くだけでも感動が深まるはずです。寺院や遺跡を巡りながら、古代王国のロマンと仏教文化の源流に思いを馳せてみてください。
アヌラーダプラ観光の見どころと現地体験
広大なアヌラーダプラの遺跡群は、市街地と隣接しながらも南北約5km・東西約2kmの範囲に点在しています。徒歩で回るには大きすぎるため、効率よく巡るには交通手段を工夫しましょう。



一般的にはトゥクトゥク(現地の三輪タクシー)を半日〜1日チャーターして主要スポットを案内してもらうか、自転車をレンタルして自分のペースで回る方法があります。
街全体がのどかな田園風景に包まれているので、サイクリングで風を感じながら巡るのは爽快です。多くの宿泊施設で自転車を貸し出しており、無料または1日数百ルピー程度で利用できます。
一方、トゥクトゥクは宿や街中でドライバーに声をかければ手配可能です。乗車前に料金交渉は必須で、相場は2〜3時間で2,000~3,000ルピー程度(巡る場所数による)です。
日本語は通じませんが、簡単な英語やガイドブックの地図を指差して行き先を伝えれば問題ありません。なお、一部の悪質な運転手は「安く案内する」と言いながら遺跡の入場チケット売り場を故意にスルーし、チケット未購入のまま無料エリアだけ回ろうとすることがあります。



確かにアヌラーダプラ遺跡群のチケット(後述)は外国人にとって割高ですが、無札で入れる範囲は限られ主要箇所は見学できません。結果として重要スポットを見逃すことになるので、運転手任せにせず自分でチケットは購入しましょう。
入場料とチケット購入情報
アヌラーダプラ遺跡群の主要エリアを観光するには、外国人の場合共通入場チケット(サイマルチケット)の購入が必要です。料金は30米ドル(または同等のスリランカルピー)で、中央文化基金(Central Cultural Fund)による遺跡保全費に充てられます。



チケットは購入当日限り有効で、翌日に持ち越して使うことはできません。そのため遺跡巡りは基本的に1日で集中的に行う計画を立てるか、2日以上滞在する場合は日ごとにチケットを買う必要があります。
チケット販売所は遺跡エリア内の数か所(博物館入口や主要遺跡付近)に設置されています。おすすめはまず考古学博物館(アヌラーダプラ博物館)に立ち寄ってチケットを購入し、簡単な展示で予習してから巡るルートです。



博物館には古代の石彫や出土品が展示され、遺跡理解の助けになります(主要な宝物類はコロンボ国立博物館に移送されていますが、それでも見応えあり)。
なお遺跡エリアには明確なゲートがなく自由に出入りできますが、主要スポット付近には係員がいてチケット提示を求められます。万一チェックをすり抜けても後で困るだけなので、堂々と正規に購入しましょう。
ちなみにアヌラーダプラ遺跡には無料で見られる範囲も一部存在します。



現地係員によれば「16番~19番の遺跡(クルネガラ・ジャンクションより南側)は無料区域」とのことでしたが、人によって案内が異なったり時期により変わるようです。
あまり当てにせず「運が良ければラッキー」くらいに思っておきましょう。



それよりも一番気を付けたいのは、チケット日付です。午後到着で当日中に全て回りきれない場合、無理せず翌日券を買ってゆっくり見学した方が結果的に満足度は高いでしょう。
例えば初日はチケット購入せず郊外のミヒンタレー観光に充て、翌日に朝から遺跡巡りをするプランもおすすめです。効率と予算を両立させつつ、余裕を持って聖地を堪能してください。
観光時のマナー・注意ポイント
アヌラーダプラは仏教の聖地です。寺院や仏塔を見学する際には以下のマナーと注意点を守りましょう。
- 服装:露出の多い服は避け、肩や膝が隠れる服装で訪れてください。特に女性はノースリーブや短パン・ミニスカートはNGです。白など淡い色の服を着ると、巡礼者と同じように敬意を示すことになり好印象です。
- 履物:寺院敷地内や仏塔の周囲は裸足での参拝が基本です。入口で靴を脱ぐよう指示されますが、日中は地面が非常に熱くなっています。厚手の靴下を履いて行くと足裏の火傷を防げます。脱ぎ履きしやすいサンダルで行くと良いでしょう。
- 頭部:帽子や日傘は寺院敷地内では使用禁止です。強い日差しの下では日陰で休みつつ、小まめな水分補給で凌ぎましょう。日焼け止めもお忘れなく。
- 写真撮影:遺跡では撮影可能ですが、仏像や仏塔に背を向けて写真を撮らないでください。これは大変不敬とされます。自撮りの際も背後に仏像が写らないよう注意しましょう。またフラッシュも禁止です。
- 野生動物:遺跡内にはサルやリスなどが多く生息しています。とても人懐こく近寄ってきますが、エサを与えたり触ったりしないでください。荷物から食べ物を奪うこともあるのでご注意を。
- 巡礼者への配慮:多くの地元信者が祈りを捧げています。彼らの邪魔にならないよう静かに行動し、写真を撮る際も礼拝中の人々を不用意に映さないよう配慮しましょう。
上記を守れば、観光客でも温かく迎えてもらえます。白い服を着たスリランカ人の家族連れや一人巡礼の女性なども大勢訪れているので、女性の単独旅行者でも過度に心配はいりません。
現地では子どもがお菓子を勧めてくれたり、家族写真に誘ってくれるようなフレンドリーな場面もあるかもしれません。笑顔で挨拶し、お互い気持ちよく聖地の空気を味わいましょう。
スリー・マハー菩提樹(仏陀の菩提樹)
アヌラーダプラ観光で最も外せないスポットが、市中心部にそびえるスリー・マハー菩提樹(Sri Maha Bodhi)です。約2300年前に仏陀成道のインド・ブッダガヤ聖菩提樹から分けられ、この地に植えられたと伝わる聖木で、世界で最も古い年代が判明している樹木とも言われます。
今も青々と茂る大樹は白い壁に囲まれ、幹や枝には無数の金色の布(幡)が結ばれて神聖な雰囲気です。
菩提樹のエリアへ入ると、足元には落ち葉が散らばっています。



一見ただの葉ですが、この菩提樹の葉が頭上から舞い落ちてきたら大変な幸運とされています。実は風で飛ばされた葉は隣接のティッサ・ウェワ湖まで運ばれてしまうという不思議な伝説があり、境内で拾えることは滅多にありません。
もし運良く一枚手に入ったら大切に持ち帰りましょう(現地ではラミネート加工された菩提樹の葉のお守りが売られていることもあります)。



境内では、多くの参拝者が菩提樹に向かい合掌し祈りを捧げています。みな純白の服に身を包み、蓮の花やお線香を供える姿は厳かそのものです。
毎日昼頃には僧侶による読経やお供物(ミルクライスなど)の奉納が行われ、梵鐘や太鼓の音が響き渡ります。訪れる時間帯によっては、こうした信仰儀礼の一端を垣間見ることができるでしょう。菩提樹周囲の回廊を静かに歩きながら、神秘的な空気と人々の信心深さに触れてみてください。
なお、菩提樹エリアは遺跡共通チケットが不要な無料公開区域です。入口で簡単なボディチェックがありますが誰でも入れます。ただし寄進を求める僧侶や物乞いもまれにいるので、対応に迷う場合は笑顔で会釈しその場を離れましょう。
ルワンウェリ・サーヤ大塔(ルワンウェリ大塔)



菩提樹からほど近い場所に建つルワンウェリ・サーヤ大塔(Ruwanwelisaya Dagoba)は、アヌラーダプラを象徴する白亜の巨大仏塔です。紀元前2世紀、シンハラの英雄と称えられるドゥトゥガムヌ王(ドゥッタガーミニー王)によって建立されました。
高さは現在約55mありますが、尖塔部分が失われる前は70m以上あったとも言われています。当時として世界最大級の建造物であり、その威容から「大黄金塔(スワルナマハー・チェーティヤ)」の異名を取りました。
大塔は毎年真っ白に塗り直されており、スリランカの青空に映える純白の姿は写真映えも抜群です。塔の基壇(基礎部分)をぐるり取り囲むように彫られた数百頭の石像の象も迫力があります。



巡礼者たちは塔を時計回りにゆっくりと周回しながら祈りを唱えており、現代においても変わらぬ信仰の対象であることが伺えます。夕暮れ時には僧侶たちが読経を行い、多くの参拝者が集まる姿は厳かで心を打たれる光景です。
観光客も仏塔の周囲を歩いて回ることができますが、くれぐれも中央の仏塔に背を向けて写真を撮らないよう注意が必要です(特に記念撮影の時は要注意)。



ルワンウェリ・サーヤ大塔は周囲を取り囲むように回廊や礼拝スペースが整備され、参拝しやすい雰囲気です。靴を脱いで白く滑らかな大理石敷きの床を歩きながら、そのスケールを肌で感じてみましょう。
早朝や夕方は太陽の傾きで塔が黄金色に輝き、美しさが一層増します。
イスルムニヤ精舎(ロック寺院)
街の南端近くに位置するイスルムニヤ精舎(Isurumuniya Temple)は、アヌラーダプラ遺跡の中でも異色の雰囲気を持つ小さな寺院です。自然の巨岩と一体化するように建てられたことから「ロック・テンプル」とも呼ばれます。



建立は紀元前3世紀頃と古く、インドから仏教が伝来した際にデーワーナンピヤ・ティッサ王が建立した僧院が起源とされています。
現在の本堂は後世に改築された比較的新しい建物ですが、内部には極彩色の涅槃仏(横たわる仏像)が安置され、天井画も鮮やかです。この涅槃仏の彩色はなんと東京・浅草の浅草寺の支援によって塗り直されたものだそうで、日本とスリランカの仏教交流を感じられるエピソードです。



寺院入口で履物を預け(入場料500ルピーが別途必要です)、裏手へ進むと巨岩に沿って上へ登れる階段があります。岩の上に出ると小さな白い仏塔(ストゥーパ)が立っており、アヌラーダプラの遺跡エリアを一望できるビューポイントになっています。
眼下には参道を歩く白い服の人々や遠くのルワンウェリ大塔が見え、仏教国スリランカらしい穏やかな風景です。



イスルムニヤでもう一つ有名なのが、岩肌にある小さな博物館に展示された「恋人たちの像」です。5世紀頃の古代彫刻で、肩を寄せ合う男女が繊細に彫られています。
伝説では紀元前2世紀の王子サーリヤと身分違いの恋に落ちた娘を表しているとも言われます(諸説あり)。この像はスリランカ三大美術品とも称され、ほんのり微笑んだ二人の表情が「古代のモナリザ」とも評されます。
アヌラーダプラほどの古都でこれほど人間味あふれるロマンチックな作品が残っているのは驚きで、ぜひ間近で鑑賞してみてください。
アバヤギリ大塔と僧院遺跡群
アヌラーダプラ北側の広大な一帯には、かつてアバヤギリ僧院という一大寺院コンプレックスが存在しました。中核となるアバヤギリ大塔(Abhayagiri Dagoba)は紀元前1世紀に建立され、ルワンウェリと並ぶ巨大仏塔です。



現在高さ約75mありますが、当時は100m近くあったとも推測されます。レンガ積みの外観は修復が進み美しい曲線を取り戻しています。
アバヤギリ大塔周辺には往時の大僧院を偲ばせる多彩な遺跡が点在しています。中でも見逃せないのがクッタム・ポクナ(双池)と呼ばれる二つの巨大な沐浴用水槽跡です。





アヌラーダプラ遺跡エリア内でも特に「これぞ遺跡!」と興奮する光景だという旅行者も多いスポットです。クッタム・ポクナは8〜9世紀頃に造られた僧たちの浴場跡で、大小2つの長方形の池が石組みで造られています。
北側の小さい池の方が南側の大きい池より古く作られたことが分かっており、時代差による構造の違いも興味深い点です。
池の両端には池に降りる階段があり、水を浄化するための巧妙な石造フィルターや、水面に張り出すようにデザインされた石橋も残っています。



当時の僧侶たちはここで身を清めた後に修行や礼拝に臨んだのでしょう。池の周囲では現在でもサルたちが遊び回っており、ひょっとするとサルも水浴びしているのかもしれません。
古代から続く水と人(動物)の関わりに思いを馳せると感慨深いものがあります。
アバヤギリ僧院跡では他にもサマーディ仏像(瞑想する仏陀の石像)や月の石(ムーンストーン)、僧院の食堂跡など見所多数です。サマーディ(坐像)仏は高さ2mほどの優美な石仏で、その穏やかな表情からスリランカを代表する仏像とされています。



ムーンストーンは半円形の玄関敷石で、ゾウや馬などが同心円状に彫られた精巧な石工芸です。これらはそれぞれが独立した遺構ですが、広義ではアバヤギリ僧院の一部として機能していたと考えられています。
遺跡好きの方は、ぜひ広いアバヤギリエリアを時間をかけて散策してみてください。人影まばらな森の中に石柱だけが林立する光景や、草原に佇む古井戸など、マイナーながら趣深いポイントも多数あります。
レンタサイクルで探検するには絶好のエリアで、猿や孔雀に出会うこともあります。気温が上がる日中は避け、朝夕の涼しい時間帯に回るのがコツです。
ジェータワナ大塔(ジェトワナラーマ)
ジェータワナ大塔(Jethavana Stupa)は、アバヤギリ大塔からほど近い場所にそびえるもう一つの巨大仏塔です。3世紀にマハーセーナ王が建立したレンガ造りの塔で、当時は高さ122mに達し、ピラミッドに次ぐ世界第3位の高層建造物であったとされています。



復元された現在でも約70mあり、今なお世界最大のレンガ造建築としてギネス級の規模を誇ります。
その圧倒的な体積からか、ジェータワナ大塔は森の中から突然巨大な“赤い山”が現れたような迫力があります。塔の頂上部分は欠け落ちていますが、胴体部の美しい曲線はよく保存・修復されています。



基壇の周囲には古代の僧坊や経蔵(経典を納めた建物)、瞑想小屋の跡なども残り、一帯が大寺院ジェータワナラーマの境内だったことが偲ばれます。
記録によれば、この仏塔には仏陀の帯の遺物が奉安されていたそうです。現在でも地元の人々は手を合わせ祈っており、信仰対象としての尊厳が保たれています。



観光客にとっては、その巨大さ自体が一見の価値ありですが、塔を取り囲む遺跡群にも注目です。草原に並ぶ無数の小石塔や、僧院の浴場と見られる円形の石組(“スワスティカ型”と呼ばれる独特の形状)など、ジェータワナだけの見所があります。
なおジェータワナとアバヤギリの中間地点には双子の碑文と呼ばれる石碑も展示されています。これは1900年代初頭に発見された2枚一対の石板で、古代シンハラ語(ブラーフミー文字)の僧院規則が彫られているものです。



古代の戒律や当時の生活規範を知る貴重な資料で、考古博物館近くの屋外に置かれています。時間があればぜひ探してみてください。
ミヒンタレー(郊外の仏教遺跡と絶景ポイント)


市街地から約13km、トゥクトゥクで30〜40分ほど東に行った場所に、ミヒンタレー(Mihintale)と呼ばれる小高い丘があります。実はこここそがスリランカに仏教が初めて伝わった地として知られる、もう一つの聖地です。



紀元前3世紀にインドの阿育王(アショーカ王)からの使者マヒンダ長老がこの丘で王デーワーナンピヤ・ティッサに布教し、改宗させたという故事があります。名前の由来もマヒンダが訛った「ミヒンタレー」だと言われます。
現在、ミヒンタレーの丘にはいくつもの仏教遺跡が点在し、石段を登って巡礼・見学できるようになっています。



主な見所は頂上の「カサパ大塔(またはマハーサーヤ大塔)」と中腹の「カラウパンキ(黒水池)」、そして断崖上にそびえる「瞑想僧院跡(エタヴァナ堂)」です。
特に頂上からの眺望は素晴らしく、アヌラーダプラの街並みや遠くの仏塔群が一望できます。夕日や朝日が昇る時間帯には幻想的な風景となり、写真撮影にも最適です。



夕暮れ時には巡礼者も集い、丘全体がオレンジ色に染まります。スリランカでは毎年6月の満月(ポソン・ポヤ)の日に、このミヒンタレーへの大巡礼祭が行われ、全国から信者が詰めかけます。
満月夜には山道に灯篭が並び、無料の食事施し所(ダンサラ)が開かれるなど、一種のお祭り騒ぎとなります。ちょうどその時期に訪れる場合、混雑は覚悟ですが現地の信仰行事を体感する貴重な機会となるでしょう。
ミヒンタレーへはアヌラーダプラからトゥクトゥク往復チャーターが便利です(往復で2000〜2500ルピー程度)。遺跡エリアとは離れているため共通入場券は使えず、別途ミヒンタレー入場料(500ルピーほど)が必要です。



しかし規模以上に満足度は高く、特に「着いた日の夕方にミヒンタレーで夕陽鑑賞、翌日朝からアヌラーダプラ遺跡巡り」というプランは非常におすすめです。
女性の一人旅でも夕暮れ時は多くの巡礼客がいるので安全ですし、家族連れなら丘の上でのんびりピクニック気分も味わえます。アヌラーダプラ本体と合わせて、時間が許せばぜひ訪れてみてください。
アヌラーダプラのグルメ情報
古都アヌラーダプラは信仰の街ということもあり、コロンボや観光地のような華やかなレストラン街は多くありません。



地元の人々は自宅や宿坊で食事を済ませることが多いため、観光客向けの飲食店は新市街に点在している程度です。そのため「食事は宿泊先のホテルやゲストハウスでとる」という旅行者も少なくありません。
特に夜は街全体が早寝で静かになるため、宿で夕食を用意してもらうのが安心です。
とはいえ折角スリランカに来たからには本場の料理も味わいたいですよね。アヌラーダプラで試したい代表的なスリランカ料理と言えば、やはりライス&カリーです。


大きな皿に山盛りの白米と数種類のカレーや副菜が盛られた定食スタイルで、魚やチキンのカレー、レンズ豆のダルカレー、ポルサンボル(ココナッツふりかけ)などが色とりどりに並びます。
辛さはお店によってまちまちですが、日本人には少しピリ辛に感じる程度からかなりスパイシーまで様々です。辛いのが苦手な方やお子さんには「スパイシー控えめ(Less spicy, please)」と伝えれば多少調整してもらえます。



他にもコットゥ・ロティ(コットロティ)と呼ばれる炒め物も人気のローカルフードです。薄いロティ(パン生地)を細かく刻み、野菜や肉と一緒に鉄板で刻むように炒めたもので、チョップドサラダのホット版といった感じです。
夜になると「カンカンカン!」という包丁で鉄板を叩く独特の音が街角から聞こえてきます。これがコットゥ・ロティ調理中の音で、興味があれば音を頼りに屋台を探してみるのも一興です。クセになる美味しさでバックパッカーにもファンが多い料理です。
アヌラーダプラ市内で旅行者に評判の良い食事処としては、例えば以下のようなところがあります。
- Little Paradise (リトル・パラダイス):新市街にあるゲストハウス併設のレストラン。観光客向けに食べやすくアレンジしたスリランカ料理が好評で、「島内の色んな地域で食べた中でもトップクラスに美味しい」との声もあるほど。清潔で雰囲気も良く女性一人でも入りやすいです。カリーの他に中華風メニューやパスタなどもあり、家族連れで行っても子供が食べられるものが見つかるでしょう。
- Palhena Restaurant (パルヘナ):地元の人も利用する庶民的な食堂ですが、カレー類の味付けが良く観光客にも評判です。店員さんが親切で英語も通じやすく、ビールなどアルコールも提供しています。価格もリーズナブルなのでバックパッカーにも◎。夜遅くまで営業しているので夕食に困ったら覗いてみると良いでしょう。
- Mango Mango (マンゴー・マンゴー):インド料理を中心にしたレストランで、香り豊かなビリヤニ(スパイス炊き込みご飯)やタンドリーチキンなどが人気です。エアコン完備で店内は快適、比較的大きなお店なのでグループでも利用しやすいです。スリランカ料理に少し飽きた時やベジタリアン料理を探している時にもおすすめです。
この他、新市街には中華料理や洋食のレストランも点在しています。例えば「Chamy Restaurant」のようにローカル+中華ミックスのメニューを出す店もあります。



短期旅行ではなかなか複数店を試す余裕がないかもしれませんが、「昼は観光途中のローカル食堂でカレー、夜は宿でゆっくり夕食」というようにメリハリをつけると良いでしょう。
一人旅ならお昼を軽めにして夜に宿の食堂で他の旅行者と交流するのも楽しいかもしれません。
飲み物は、ぜひキングココナッツ(タキング)をご賞味ください。オレンジ色のヤシの実をその場で割ってストローを挿した南国定番ドリンクで、汗をかいた体に染み渡る甘い天然スポーツドリンクです。



街角で100ルピー程度で売られています。また紅茶の国スリランカだけあって、ティータイム文化もあります。遺跡巡りの途中でカフェに立ち寄り、名物のキリテー(ミルクティー)やアイスコーヒーで一服するのも良いでしょう。
最後に注意ですが、アヌラーダプラ旧市街(聖域)エリアではアルコール飲料の提供が制限されています。大半のレストランやホテルバーは新市街側にあるので問題ありませんが、遺跡周辺では飲酒は控えましょう。
巡礼者の手前、公共の場での喫煙や飲酒はマナー違反となります。節度を守ってスリランカの食文化を楽しんでください。


アヌラーダプラで買いたいお土産
スリランカ旅行の締めくくりと言えば、やはり魅力的なお土産探しです。アヌラーダプラは観光地とはいえ商業都市ではないため、お土産ショップの数は多くありません。
ただし市内には政府経営のハンドクラフトショップ「ラクサラ(LAKSALA)」の支店があり、質の良いスリランカ工芸品を購入できます。
また郊外の観光地(キャンディやコロンボなど)と比べ客が少ない分、掘り出し物が見つかることも。以下、スリランカ旅行者に人気の定番土産をいくつか挙げます。
セイロン紅茶
世界有数の紅茶生産国スリランカの紅茶は外せません。有名ブランドのディルマやムレスナはもちろん、農園直送のリーフティーもおすすめ。
現地スーパーで手軽に買えるティーバッグ詰め合わせなどは職場や友人へのばらまき土産にも便利です。紅茶好きな方へは高級茶葉「ウバ」や「ヌワラエリヤ」のシングルオリジンも喜ばれます。


スパイス類
シナモン(桂皮)やクローブ、カルダモンといった香辛料は質が高く安価です。市場やスーパーで小袋に詰められたスパイスセットが売られているので、自宅用にも◎。特にセイロンシナモンは香りが甘く上品で有名です。
バティック布製品
スリランカ伝統の蝋染め布「バティック」は象柄やプージャ(祭礼)柄などカラフルなデザインが特徴。壁掛けやテーブルクロス、衣類など様々な製品があります。ゾウの絵が描かれたものは人気が高く、リビングのインテリアにぴったりです。
木彫り細工・仏像
手のひらサイズの木彫りの象や仏像、キャンディのデビルマスク(悪魔祓いの仮面)など工芸品も豊富です。アヌラーダプラの遺跡周辺でも小さな屋台で木彫りのお守りやペンダントが売られています。ただし仏像を購入した場合、日本へ持ち帰った後は敬意を持って扱いましょう(床に直置きしない等)。
アーユルヴェーダ製品
スリランカの伝統医療アーユルヴェーダ由来のハーブ製品も人気です。ハーブ歯磨き粉(ヘラボラなど)やココナッツオイル配合の石鹸、サマハンティー(風邪予防ハーブティー)、バーム(軟膏)などは安価で効果も高いと評判。現地の薬局やスーパーマーケットで気軽に手に入ります。


宝石・ジュエリー
スリランカは宝石の名産地でもあります。特にサファイアやルビー、ガーネットなどが有名です。ただ本格的な宝石は専門知識がないと難しく、偽物トラブルもあり得るので、購入するなら信用できる宝石店(コロンボやキャンディの政府認定店など)で。カラーストーンのシルバーリング程度ならお手頃価格で売っていますので、記念に覗いてみるのも良いでしょう。


お土産は、アヌラーダプラ滞在中に探す時間がなければコロンボや空港でも購入できます。



ただし同じ商品でも地方都市の方が安いことが多いです。例えば紅茶やスパイスは現地スーパー(アヌラーダプラ新市街にもKeellsやCargillsといった大手スーパーがあります)で買うとリーズナブルですし、雑貨類もラクサラでまとめ買いすれば質の割に安価です。
交渉が必要な市場での買い物は上級者向けですが、バックパッカーの方なら果敢に値切ってみるのも思い出になります。



シニア世代の方は重い物やかさばる物は避け、紅茶や乾燥スパイスなど軽いもの中心がおすすめです。女性へのお土産にはセイロンティー入りのコスメセットや、宝石をあしらったちょっとしたアクセサリーも喜ばれるでしょう。
男性にはスリランカ名物のココナッツ発酵酒「アラック」のミニボトルなんて珍しいかもしれません(アルコールなので持ち帰りは自己責任で)。家族や友人の顔を思い浮かべながら、スリランカならではの品を選んでみてください。
まとめ
- アヌラーダプラは紀元前4世紀に建設され1400年続いたスリランカ最古の都。仏教伝来の聖地として現在も巡礼者が絶えません
- コロンボからのアクセスは鉄道+バス併用約5時間、直通ACバス約4時間、ローカルバス5~7時間、タクシーチャーター約4~5時間。快適さ重視なら専用車、費用重視ならバスがおすすめです
- 遺跡観光はUS$30の共通チケット(当日限り有効)を購入して主要スポットを回ります。裸足エリアでは靴下着用、露出控えめな服装などマナーを守り、仏像に背を向けない等の注意を忘れずに
- 見どころはスリー・マハー菩提樹(世界最古級の菩提樹)や純白のルワンウェリ大塔、巨大な双池クッタム・ポクナなど。自転車やトゥクトゥクで効率よく巡り、余裕があれば夕方のミヒンタレーも必見です
- グルメはローカル食堂でライス&カリーに挑戦!辛い時は遠慮なく「辛さ控えめ」を。レストランは少なめなので宿の食事も活用し、キングココナッツや本場のミルクティーで南国気分を味わいましょう
- お土産は紅茶・スパイス・バティック布など定番品が喜ばれます。ラクサラ土産店で品質重視の買い物を。重たい物は避けつつ、旅の思い出に残る一品を選んでください



これでアヌラーダプラ観光の予習はばっちりです。歴史と信仰が息づく古都を訪れ、素敵なスリランカ旅を満喫してください。きっと忘れられない感動があなたを待っています。安心安全な旅となりますように!