スリランカは「インド洋の真珠」と称される島国。その透き通った海には色とりどりの生命があふれ、ダイビングやシュノーケリング愛好家にとってまさに楽園です。

カラフルなサンゴ礁を彩る熱帯魚の群れ、優雅に泳ぐウミガメ、そして歴史を物語る沈没船の数々。
さらに運が良ければ巨大なクジラに出会えることもあり(南西海岸では11~4月、北東海岸では5~10月にブルーワールなどのクジラが沿岸に現れます)、スリランカの海は冒険心をくすぐる魅力でいっぱいです。





実際、南西部ヒッカドゥワのサンゴ礁には、世界最大のグレートバリアリーフを上回る種類の海洋生物が生息するとさえ言われています。
本記事では、初心者から上級ダイバーまでスリランカ全土で楽しめるダイビング情報を網羅し、絶景スポットやベストシーズン、ライセンス取得情報まで詳しくご紹介します。
さあ、スリランカの海中世界へ一緒に飛び込んでみましょう!


スリランカダイビングの魅力と特徴
一年中ベストな海がある – スリランカは一年を通してダイビングが楽しめる稀有な国です。島の周囲でモンスーン(季節風)の時期が異なるため、季節に応じてダイブエリアを変えれば常に穏やかな海で潜ることができます。



例えば11~4月は南西部の海がベストシーズン、5~10月は北東部の海が穏やかになります。熱帯気候の海水温は通年27~30℃と暖かく、寒さを気にせず潜れるのも嬉しいポイントです。
多彩な海洋生物
スリランカの海は生物多様性の宝庫です。カクレクマノミやチョウチョウウオ、トリガーフィッシュ、バラクーダに巨大なハタまで、カラフルなサンゴ礁には大小様々な魚たちが群れています。


岩陰を覗けばウツボが顔を出し、海底にはユニークなウミウシやエビなどマクロ生物も豊富です。ときには優雅に泳ぐウミガメやエイに出会うこともあり、海の中は驚きと発見の連続です。
さらに冬季(12~4月)の南西海岸では巨大なシロナガスクジラの歌声が水中で聞こえることもあるなど、スケールの大きな出会いが待っています。


沈没船(レック)の宝庫
スリランカ周辺の海には、古くは18世紀から現代に至るまで数多くの船が沈んでおり、まさに沈船ダイブの宝庫です。
コロンボ近海には大小合わせて12以上の難破船が沈んでおり、その深度は約30~57mに及びます。


19世紀の蒸気船や第二次大戦時の軍艦まで、水中博物館さながらの歴史ロマンを体感できます。



例えば東海岸バッティカロア沖のHMSヘルメスは、世界初の航空母艦として建造された英軍艦が1942年に沈んだもので、水深約53mに横たわる巨大なレックです。
船内には当時の遺留品が残り、上級者にとっては世界屈指の沈船ダイブとして知られています。また南東沖グレートバス岩礁では、18世紀インドのムガル帝国の財宝船が眠っており、発見者の一人である作家アーサー・C・クラークが銀貨の詰まった袋を引き上げた逸話も有名です。
このようにスリランカの海には多彩な物語が沈んでおり、冒険者心をくすぐります。
ビギナーからテクニカルダイバーまで
スリランカは地形も生態も変化に富んでいるため、初心者が楽しめる浅場のサンゴ礁から、経験豊富なダイバー向けのディープダイブ、テクニカルダイブまで幅広いレベルに対応しています。


サンゴ礁沿いの浅瀬では穏やかな海況の日が多く、初めての体験ダイビングやシュノーケリングにも最適です。



一方で外洋に目を向ければ強い潮流が流れるポイントや深場の沈船もあり、上級者やテクニカルダイバーが腕試しできるチャレンジも揃っています。
例えば南部のグレートバスは流れが速いため非常に高度なスキルが要求されるポイントですが、その分手付かずの自然と大物との遭遇が待っています。
このように、レベルに応じた海の楽しみ方ができるのもスリランカダイビングの魅力と言えるでしょう。
以上のように、年中どこかでベストシーズンを迎えるスリランカの海は、豊かな生態系と歴史ロマンに彩られ、まさに「ダイバーの楽園」と呼ぶにふさわしい舞台です。次章からはエリア別に、その魅力を余すところなくご紹介していきます。
ベストシーズンとエリア概要
前述の通り、スリランカでは季節ごとに最適なダイビングエリアが移り変わります。これは季節風(モンスーン)の影響で海況が地域によって変化するためです。下表に簡単にまとめました。



スリランカは島全体がインド洋に囲まれており、海の透明度も全般に高めです。沿岸部の平均透明度は10~12mほどで、特に良い日は20m近く見通せることもあります(北東部トリンコマリーで15~20m)。
さらに沖合に出れば30~40mの抜群の透明度を記録することもあります。水温も年間を通じ25~30℃前後と暖かいため、ウェットスーツ一枚で快適に潜れるでしょう。
ただし季節風の時期には沿岸が荒れるため、上記シーズン表を目安にエリアを選ぶことが大切です。また、モンスーンに合わせてザトウクジラやイルカなど回遊大型生物のベストシーズンも移り変わる点も見逃せません。





12~4月頃の南西沿岸(ゴール~ミリッサ周辺)ではホエールウォッチングが盛んで、世界最大のシロナガスクジラを見るチャンスがあります。一方、5~10月の北東部(トリンコマリー沖)ではイルカやクジラが多く目撃されます。
こうした海洋生物のシーズナルな魅力も踏まえて旅程を組むと、より充実した体験になるでしょう。
それでは次に、地域ごとの代表的なダイビングスポットを詳しく見ていきます。南西エリアと北東エリアそれぞれに、初心者向けから上級者向けまで様々なポイントがありますので、自分のレベルや興味に合わせてチェックしてください。
西海岸・南西海岸のダイビング(11~4月)
スリランカ南西部から西岸にかけては、年間でもっともダイビングに適した時期が11月~4月に訪れ、多くのダイブセンターがオープンします。
このエリアには世界的に有名な観光ビーチも点在し、美しい海とビーチリゾートを同時に楽しめるのも魅力です。



海のコンディションは総じて穏やかで透明度も良好(15m前後)で、初心者ダイバーやシュノーケラーに理想的な環境と言えます。
一方で沈船やオフショアの隠れ根など上級者向けポイントも多く、「スリランカ最高のダイビングは南部沿岸にある」とも言われます。ここでは、西・南西エリアの主要スポットをいくつか紹介しましょう。
カルピティヤ(北西部) – 最大級のサンゴ礁「バールリーフ」
スリランカ北西部のカルピティヤは、国内最大のサンゴ礁を擁する新興リゾートエリアです。
沖合2kmに位置するバールリーフは、長さ約3kmにも及ぶ巨大なサンゴ礁で、150種類以上のサンゴと280種を超える熱帯魚が生息する国立海洋保護区となっています。
リーフの水深は浅いところで3~5mほどと浅いため、シュノーケリングにも絶好のポイントです。透明度の高い穏やかな海で、カラフルな熱帯魚の群れや多彩なサンゴの景観を初心者でも気軽に楽しめます。


一方、バールリーフ周辺にはダイバー向けのスポットも点在します。ブルドッグリーフは水深15m程度のポイントで、クロコダイルフィッシュやウツボ、カワハギの仲間などマクロ生物観察や水中写真に適したスポットです。



またカルピティヤ・リッジと呼ばれるエリアは最大水深30mに達し、水中洞窟の探索やロックコード(ハタの一種)、大型のバラフエダイ、ナポレオンフィッシュ(メガネモチノウオ)など大物との遭遇も期待できます。
カルピティヤ周辺は潮流も弱く穏やかな日が多いですが、潮汐の変化で流れが出ることがあるため注意しましょう。
なお、日差しが強くサンゴで擦り傷も起きやすいので、長袖ラッシュガードや薄手のウェットスーツ着用がおすすめです。
ヒッカドゥワ – サンゴ礁とウミガメの楽園
コロンボから南へ車で約2時間、ゴール近郊に位置するヒッカドゥワは、南西海岸を代表するビーチリゾート兼ダイビングスポットです。
透明度の高いラグーンに色鮮やかなサンゴ礁が広がり、約60種のハードコーラルと170種以上のリーフフィッシュが記録されています。
ビーチからすぐの浅瀬でも熱帯魚の群れやソフトコーラルが見られるため、シュノーケリング初心者にも理想的な環境です。実際、ヒッカドゥワは南部きってのシュノーケリングスポットとして有名で、浜辺近くの「ウミガメの湾」では野生のアオウミガメに間近で遭遇できます。


餌付けされた大きなウミガメが浅瀬に現れる姿は感動的で、子供連れの旅行者にも人気です。
ダイビングでは、サンゴ礁エリアのキララガラやゴダガラ、ブラックコーラルポイントなどが初級~中級ダイバーに人気です。
水深10~18m程度の岩礁や根が点在し、カラフルな魚群や群れ泳ぐフエダイ、チョウチョウウオ科の魚たち、そして名前の通り黒いイソバナ(ブラックコーラル)が観察できます。



ヒッカドゥワはまた沈船ダイブの宝庫でもあります。沿岸には1903年沈没の石油タンカー「SS Conch」(深度約14m)や、1893年沈没の4本マスト帆船「アール・オブ・シャフツベリー号」(深度約15m)などの沈船が横たわっています。
浅めの沈船なのでオープンウォーターレベルでも潜水可能で、内部に潜って探検することもできます。沈船周辺には大型のアカエイやグルーパー(ハタ)、ライオンフィッシュ、ハリセンボンなども生息しており、魚影の濃さも見どころです。
ウナワトゥナ&ゴール – ビーチリゾートと沈船探検
ゴール市街近くのウナワトゥナは、絵葉書のような弓なりの砂浜で知られる世界的なビーチリゾートです。同時にシュノーケリングとダイビングの名所でもあり、湾内の穏やかな浅場には熱帯魚あふれるサンゴ礁が広がっています。
特にジャングルビーチと呼ばれる隠れた入り江は、魚影が濃くシュノーケリングに最適のスポットです。


浅瀬で群れるカラフルな小魚や、岩陰に潜むモンガラカワハギ、ウツボ、さらには大きなバラクーダを見ることもできます。



ウナワトゥナ周辺の透明度は良好で、初心者でも安心して海中散策が楽しめるでしょう。一方、ウナワトゥナ~ゴール沖は歴史的沈船の宝庫としても知られています。
ゴール要塞の真向かい、水深約30mの海底には「SSランゴーン」という19世紀末に沈んだ英国の蒸気船が横たわっています。


ランゴーン号は砂地に航行時の姿勢を保ったまま直立して沈んでおり、船体内部にはブルーストライプ・スナッパー(フエダイ)やラビットフィッシュ、ソルジャーフィッシュ(タイセイヨウミノカサゴ)などが群れ、外側にはブルーフィントレバリー(アオチビキ)など大型魚も見られます。
深度25~30mに位置するためアドバンス以上向けのポイントですが、保存状態が良くフォトジェニックな沈船として人気です。
この他にも、ウナワトゥナ沖には多数の小型沈船や岩礁ポイントがあり、ブラックコーラルに覆われた幻想的な水中景観が広がります。


特にナポレオンフィッシュ(メガネモチノウオ)の目撃率が高いポイントとしても知られ、運が良ければ巨大な個体が悠々と泳ぐ姿を間近に観察できます。
美しいビーチリゾートの顔と、冒険心を満たす水中世界の顔。その両方を併せ持つウナワトゥナ&ゴールは、初心者から上級者まで幅広いダイバーにおすすめできるエリアです。
ミリッサ&ウェリガマ – サンゴ礁と青い海原
南岸のミリッサは、ホエールウォッチングの拠点として有名な町ですが、周辺海域ではダイビングやシュノーケリングも楽しめます。
隣町のウェリガマにかけては全長約700mにもおよぶサンゴ礁が発達しており、カラフルなサンゴやクマノミ、スズメダイの仲間が群れる浅場は初心者にも最適です。


海底はなだらかな砂地が広がり、透明度も安定しているためリラックスして潜ることができます。
ウェリガマ沖にはヤラロックと呼ばれる大小の岩が複雑に層をなすポイントがあり、水深15m前後から潜降すると岩の割れ目や小洞窟に様々な魚が隠れているのが見つかります。
またプリンス・ヘインリヒ・パッチという水中丘陵ポイントでは、大型のアカエイやニザダイ、巨大ウツボなどに出会えることがあり、最大深度22m程度で中級者に人気です。


ミリッサ周辺には潜降ポイント自体は多くありませんが、沖合に出ると大型回遊魚や哺乳類が豊富なのが特徴です。
前述の通りクジラやイルカが頻繁に姿を見せるエリアであり、水面休息中にイルカの群れに囲まれたというダイバーの体験談もあります(※シュノーケリングやダイビング中にクジラに遭遇した場合でも、直接近づいたり触れることは法律で禁止されていますので注意してください)。



ミリッサではボート上からのホエールウォッチングツアーが主流ですが、水中から彼らの存在を感じられるのは貴重な体験です。南部の青く広い海原で、大自然のスケールを肌で感じてみてください。
コロンボ沖 – 沈船に彩られた上級者の遊び場
首都コロンボの沖合は、意外にもスリランカ有数のダイビングスポットが点在しています。特に沈船の数が多く、第一次大戦時の武装商船から2009年に沈んだ新しい船まで十数隻のレックが存在しています。


コロンボ周辺は商業港湾エリアでもあるため透視度は中程度(5~15m)の日が多いですが、その分栄養豊富で魚影が非常に濃いのが特徴です。
また沖合に出ると潮流が複雑で上級者向けのダイビングが楽しめます。コロンボ沖で人気のポイントの一つが、ゴルゴニアン・ガーデンです。


水深35m付近の平坦な砂地に大小様々なウミウチワ(大扇状のソフトコーラル)が林立しており、その合間を真っ赤なイットウダイや無数のアカモンガラ(レッドトゥーストリガーフィッシュ)が泳ぎ回る光景は圧巻です。
上級ダイバー向けのディープダイブになりますが、美しい群生するウミウチワのお花畑は一見の価値ありです。
一方、バラクーダ・リーフはコロンボ南のマウントラヴィニア沖合にある長い岩礁で、深度20~23m程度ながら様々な魚群とマクロ生物が楽しめます。
ここではフエダイ、タカサゴ、ウサギフグの仲間、そして名前の由来でもあるバラクーダ(オニカマス)の編隊などが見られ、ウミウシ類やエビ・カニ類のマクロ観察もできます。中級ダイバーがゆったり楽しめる穏やかなポイントです。
コロンボエリア最大の見どころはやはり沈船ダイブでしょう。代表的な沈船を挙げると、「SSウースターシャー」(1917年沈没の英商船、深度約57m)や、「Taprobane North Wreck(SSパーシアス)」(1917年ドイツ機雷で沈没、深度30~40m)などがあります。
ウースターシャー号は船体外形こそ保っていますが内部は崩壊しており、沈船全体にソフトコーラルや黒珊瑚がびっしりと付着しています。





周囲にはイエローフィントレバリー(ヒラアジ)、ハタ、巨大なハタタテダイなどが群れ、まさに人工魚礁と化しています。パーシアス号は深度がやや浅めとはいえ20km沖合にあるため上級者向けですが、こちらもスナッパーやナポレオンフィッシュ、ロウニンアジ、ハタなど大型魚が住み着くポイントです。
コロンボには他にも浅めの練習用沈船から超深深度のテクニカルダイブ用沈船まで揃っており、「沈船天国スリランカ」を象徴するエリアと言えます。上級ダイバーの方はぜひ腕に覚えがあればチャレンジしてみてください。
東海岸のダイビング(5~10月)
一方、スリランカ北東~東海岸エリアは5月~10月がダイビングのベストシーズンです。このエリアは近年まで内戦や情勢の影響で観光開発が遅れていましたが、近年はリゾートも整備されつつあり、手つかずの自然が残る穴場エリアとして注目されています。



モンスーンオフの時期には海は湖のように穏やかで透明度も高く、サンゴの色合いや魚たちの姿がクリアに楽しめます。またイルカやクジラもこの時期に沖合へ回遊してくるため、運が良ければボート移動中に目撃することも可能です。
トリンコマリー – ピジョン島と神秘的な海の遺跡
スリランカ北東部トリンコマリーは、世界第2位の規模を誇る天然の良港を有する町で、美しいビーチと豊かな海で知られる人気観光地です。


町の沖合には大小のダイブサイトが点在し、その数は20箇所以上にも及ぶとも言われ、初心者から上級者まで幅広く楽しめます。
トリンコマリー沖でまず押さえておきたいのがピジョン島国立公園です。


ニラヴェリビーチから数百メートルの沖合に浮かぶ小島で、周囲の海は極彩色のサンゴ礁と熱帯魚にあふれるシュノーケリング天国として有名です。
透明度抜群の浅瀬で、ムレハタタテダイやユメウメイロなど色とりどりの魚の群れが舞い、ところどころにブラックチップリーフシャーク(ツマグロ)の幼魚が悠々と泳ぐ姿も見られます。
実はピジョン島はスリランカで唯一、シュノーケリングでサメ(ツマグロ)の群れを間近に見られるスポットとしても知られ、水深が浅いので初心者でも安全に観察できます。


ウミガメも頻繁に訪れるほか、運が良ければナポレオンフィッシュの若魚など大物にも出会えるかもしれません。
ピジョン島周辺の沖に出ればダイビングも可能で、色鮮やかなサンゴ礁のドロップオフに沿って中層を漂えば、そこはまさに「東部の海中楽園」です。
トリンコマリーにはまた、歴史的な沈船や航空機残骸も数多く眠っています。中でも有名なのが「HMSディオミード」という英国軍艦の沈船です。
ディオミード号は18世紀のアメリカ独立戦争期に建造された44門フリゲート艦で、1795年にオランダからトリンコマリーを奪う作戦中に暗礁に乗り上げ沈没しました。



沈船は湾内のシルト質の海底に沈んでおり透明度はあまり良くありませんが、水深約42m地点で巨大な大砲や錨などを見ることができます。
また1942年の激しい空襲では日本軍のゼロ戦や英国軍のホーカー・ハリケーン戦闘機が複数、トリンコマリー港内に墜落しており、それらの航空機残骸を探索するダイブも近年注目されています。
深度や視界の問題から上級者向けではありますが、第二次大戦の歴史に触れる貴重な機会となるでしょう。



さらにトリンコマリーで特筆すべきは、海底に眠る神秘的な遺跡の存在です。町の象徴であるスワミロック岬(恋の岬)の沖合には、17世紀にポルトガルによって破壊されたヒンドゥー教寺院の一部が沈んでいると言われています。
実際に海底にはシヴァ神やガネーシャ神の石像が横たわっており、水中に沈む寺院跡を眺めながらのダイビングはトリンコマリーならではの体験として人気です。
正式な遺跡認定はされていないものの、歴史ロマンに思いを馳せながら潜ることができるスポットとして、多くのダイバーを惹きつけています。



このようにトリンコマリー周辺はサンゴ礁の美しさと歴史的ロマンが共存するエリアです。ビーチリゾートとしても開発が進み、ホテルやダイブショップも充実してきています。
未経験者のシュノーケリングから上級者のディープダイブまで楽しめる懐の深さがあり、東海岸に訪れたらぜひ海の中も探検してみてください。
パッシクダ&バッティカロア – 手つかずの楽園と沈船ポイント
スリランカ東海岸中部、バッティカロア地区に属するパッシクダ(パッシクッダ)周辺も近年注目度が上がっているダイビングエリアです。





遠浅のラグーンに白砂のビーチが続くパッシクダ湾は、絵に描いたような美しさで知られ、波が穏やかな日はシュノーケリングでサンゴ礁を楽しむことができます。
浅瀬ではテーブルサンゴや枝サンゴにカラフルなスズメダイやベラの仲間が群れ、足が着く深さでも十分な見応えです。ビーチリゾートとしても開発が進みつつあり、初心者ダイバーの講習や体験ダイブにも適した環境と言えるでしょう。
一方、パッシクダの沖合や北側のバッティカロア沖には、中級~上級ダイバー向けのスポットが点在します。最大のハイライトは何と言っても前述のHMSヘルメスの沈船でしょう。





バッティカロア沖約8km、水深約44~55mの海底に横たわるヘルメス号は、全長約180mもの巨大な軍艦であり、その姿は「水中に眠る第二次大戦の博物館」とも称されます。
艦内から差し込む光に照らされて、現在も残骸には無数の魚たちが住み着き、マグロや大型のハタ、アカエイ、バラクーダ、フエダイなどが周囲を取り巻いています。



ダイバーによっては船窓から懐中電灯で内部を照らすと、当時亡くなった乗組員の遺骨が見えるという証言もあり(真偽は定かではありませんが)、非常に神秘的かつ畏敬の念を抱かせるポイントです。
テクニカルダイブの資格が必要な深度ではありますが、世界中の沈船愛好家が憧れるトップクラスの沈船ダイブと言えるでしょう。



その他、バッティカロア沖にはブレヌス浅瀬の沈船群も知られています。ここにはSSブレヌス(1881年沈没)とSSジョン・ジャクソン(1908年沈没)という2隻の沈船が比較的近接して横たわっており、一度のボートダイブで両方の探検が可能です。
特にジョン・ジャクソン号はスリランカ周辺で最大級の沈没船とされており、浅場から深場にかけて長大な船体を見ることができます。
どちらも深度は30~40m級で上級者向けですが、内部にはソフトコーラルやスポンジが群生し、それを住処に無数の魚たちが群れる様は壮観です。時折ロウニンアジやニシキヤッコなども姿を現し、スリランカ東部の海の豊かさを感じさせてくれるでしょう。



パッシクダ周辺には現在いくつかのダイブリゾートやショップも営業しており、シーズン中(5~10月)は講習やファンダイブも可能です。
西海岸に比べるとまだ観光客が少なく手つかずのポイントも多いため、混雑を避けてのんびりダイビングしたい方には穴場と言えます。美しいビーチで癒やされつつ、海中に眠る歴史遺産にも出会える東部の旅は、きっと忘れられない思い出となるでしょう。
グレートバス岩礁(南東沖) – 伝説が息づく冒険ダイブ
スリランカ最南東端、ヤーラ国立公園の沖合に位置するグレート・バス岩礁とリトル・バス岩礁は、スリランカ最高峰との呼び声も高いダイビングサイトです。


サンゴ礁、魚影、地形、どれを取っても抜群ですが、一方で海況が落ち着くのは毎年3月中旬~4月中旬頃のごく短期間のみ。さらに強烈な潮流が発生する難易度の高さから、非常に熟練したダイバーにのみ許される秘境ポイントとなっています。
アクセスも陸路で南東端の町キリンダまで行き、そこからボートで数十キロ沖へ出る必要があり、まさに冒険的なダイビングです。
海況が整えば、グレートバス/リトルバスでは他では得難い絶景が待っています。透明度30m以上の蒼い海に、色とりどりのサンゴ礁が断崖のようにそびえ、その周囲をマグロ、ヒラマサ、バショウカジキなど大型回遊魚が行き交います。



リーフの上や砂地にはエイやサメも頻繁に出現し、グレイリーフシャークやホワイトチップシャークが見られることもあります。ナポレオンフィッシュや巨大ハタ、群れで泳ぐフエダイやツバメウオなど、まさに水族館のような多彩な顔ぶれです。
さらにグレートバスを特別たらしめているのが、先述の18世紀ムガル帝国の財宝船の沈没です。1961年、作家アーサー・C・クラークとマイク・ウィルソンによってこの沈船は発見され、大砲や無数の砲弾とともに溶けて一塊になった銀貨の袋が引き上げられました。



その後、この財宝は「グレートバスの銀貨」として世界中のダイバーのロマンを掻き立てています。現在でも沈船の遺構は岩礁域に残されており、強い流れの中、歴史の残骸に手を触れられるのは選ばれし者のみの体験です。
近くのリトルバス岩礁にも1813年沈没の英国軍艦「HMSデイダラス」の残骸が横たわっており、こちらも上級者には見逃せません。
グレートバスでのダイビングは、現地ダイブセンターによる特別遠征ツアーでのみ可能です。年に一度の冒険ダイブとも言えるグレートバス遠征は、スリランカ在住ダイバーや世界のテクニカルダイバーが毎年虎視眈々と狙っています。
もしスキルと機会があれば、ぜひチャレンジしてみてください。波の下に隠された宝物と神秘が、あなたを待っています。
スリランカのシュノーケリングスポット
ここまで主にスキューバダイビングの視点で紹介してきましたが、シュノーケリング(スキンダイビング)でもスリランカの海は十分に楽しめます。



「ダイビングはちょっとハードルが高い…」という初心者やお子様連れでも、浅瀬のサンゴ礁で安全に海中世界を覗くことができます。
実際スリランカには、シュノーケリングだけで満足できる絶景スポットも数多く存在します。最後に、おすすめのシュノーケリングスポットをいくつかピックアップしてみましょう。
ヒッカドゥワ(南西海岸):
前述の通りヒッカドゥワビーチのラグーンはシュノーケリングの定番です。



透明度の高い浅瀬にサンゴと熱帯魚が群れ、野生のウミガメとも出会えます。ビーチからすぐのポイントなので手軽で、貸しシュノーケル器材も豊富です。
ジャングルビーチ(南西ウナワトゥナ):
ウナワトゥナの奥まった入江にある隠れ浜で、人が少なく穏やかなシュノーケリングスポット。
サンゴ礁と熱帯魚の群れが非常にカラフルで、ウツボやカニなども見つかります。ビーチまでは森の中の小道を歩いて行く必要がありますが、その価値のある穴場です。
ピジョン島(北東トリンコマリー):
シュノーケリング天国の代表格。ボートで上陸する無人島で、透明度抜群の海にサンゴと魚が密集しています。
ブラックチップシャーク(ツマグロ)の幼魚が浅瀬を回遊しており、一緒に泳げる貴重な体験ができます。国立公園指定のため入場料が必要ですが、それに見合う感動が得られるでしょう。
ニラヴェリビーチ沖(北東トリンコマリー):
ピジョン島まで行かずとも、ニラヴェリ周辺のリーフでも十分楽しめます。
ガイドと一緒にボートでポイントまで行けば、カラフルなソフトコーラルと無数の小魚に囲まれたシュノーケリングが可能です。ときにはウミガメが現れることもあり、トリンコマリー滞在時は見逃せません。
バールリーフ(北西カルピティヤ):
こちらも前述の通り、スリランカ最大級のサンゴ礁でシュノーケリングに最適な浅場が広がります。ボートで沖まで出る必要がありますが、透明度が高い日は足元3~4m下に熱帯魚とサンゴが絨毯のように広がる絶景を堪能できます。
カルピティヤはイルカクルーズも有名なので、午前中に沖合でイルカウォッチング&シュノーケリングをセットで楽しむプランも人気です。
シュノーケリングをする際は、ライフジャケットやフロート(浮き具)を活用し、安全に十分配慮してください。ボートツアー参加の場合はガイドが案内してくれます。



また、サンゴ礁保護のため決してサンゴに触れたり立ったりしないこと、ウニなどが潜む岩場ではフィンキックに注意することが大切です。
日差し対策としてラッシュガードや日焼け止めも忘れずに。シュノーケリングでもスリランカの海の美しさは十分味わえますので、ぜひチャレンジしてみてください。
ダイブショップとライセンス情報
スリランカでダイビングを楽しむにあたり、知っておきたい現地のダイブショップ事情やライセンス関連の情報をまとめます。
ダイブショップと設備:
主要な海沿いの町にはPADIやSSI公認のダイブセンターが点在しています。
例えば南西沿岸ではコロンボ、ネゴンボ、ヒッカドゥワ、ウナワトゥナ、ミリッサ等にショップがあり、北東沿岸ではトリンコマリー(ニラヴェリ周辺)、カルクッダ(パッシクダ)にショップが営業しています。



ただ、日本語対応のショップは2025年現在存在せず、基本的に英語での対応になります。英語が不安な方は、日本人スタッフのいる旅行会社経由で日本語ガイド同行の手配も可能です。
設備面では、大半のショップでレンタル器材やボートを保有しており、一般的なファンダイブや体験ダイブ、各種講習を開催しています。
ショップによっては季節ごとに拠点を移す場合もあります。有名なのは首都コロンボ近郊で活動する「アイランドスキューバ」で、11~4月はコロンボ南のマウントラヴィニアを基地にし、5~10月は東部バッティカロアに移動してサービスを提供しています。
このようにモンスーンに合わせて拠点を変えることで、年中ダイビング可能な体制を取っているショップもあります。




ライセンス講習:
スリランカでは各種ダイビングライセンス講習(Cカード取得コース)も受講可能です。
最も一般的なPADIオープンウォーターダイバーコースは、所要約3~4日で学科・プール実習・海洋実習を行い、無事修了すれば世界中で通用するCカードを取得できます。費用はショップにもよりますが、約300~450米ドル(日本円で4~6万円前後)が相場です。



例えばヒッカドゥワやトリンコマリーのダイブセンターでは、だいたいUSD400前後(教材・申請料別)で講習を提供しています。海外での講習は英語で行われますが、日本語テキストを用意してくれる場合もあるので事前に確認すると良いでしょう。
ファンダイブ参加条件:
既にライセンスをお持ちの方が現地でファンダイブに参加する際は、Cカード(認定証)とログブックを必ず持参してください。



スリランカ観光局のガイドラインでは、レクリエーショナルダイバーは公認指導団体のCカードとログブック、最近の医師の診断書の提示が求められる場合があるとされています。
実際のショップではそこまで厳格なチェックは稀ですが、安全のため自分のスキルを証明できるものは持っておきましょう。
また、減圧症治療のための高圧チャンバー(減圧槽)は国内でトリンコマリー海軍基地に1基あるのみです。万一西海岸で事故が起きた場合、空軍ヘリで東海岸まで搬送する事態も想定されます。
そうならないよう、潜水計画は無理なく保守的に立て、必要に応じてダイブコンピューターを携行してください。
安全管理とルール:
スリランカのダイブセンターは概ねしっかり安全管理されていますが、自分自身でも注意が必要です。
インストラクター1人につき水中ガイドできるダイバーは最大5名までなどの規定もありますので、大人数のグループに放り込まれた場合は遠慮なく申し出ましょう。



海洋生物や環境保護にも配慮が求められます。政府は文化遺産の持ち出しやサンゴの損壊を禁止しており、ダイバーも生物に触れたり餌付けしたりしないのが鉄則です。
マナーを守ってこそ、美しい海を次世代に残せることを忘れないでください。
その他役立つ情報:
ダイビング後は十分な休息を取り、フライトの前日には潜らないようにしましょう(一般的な無減圧潜水の場合、飛行機搭乗まで最低18~24時間の間隔を空けます)。
また海外旅行傷害保険にダイビング活動カバー(減圧症治療費用等)が含まれているかも事前に確認をおすすめします。スリランカの海岸エリアは蚊や日差しも強いので、陸上では虫除けや日焼け止めもお忘れなく。



以上の点に気を配れば、スリランカでのダイビングは安全かつ快適に楽しめるでしょう。美しい海と優しい現地の人々が、きっとあなたのダイビングライフを充実させてくれるはずです。
まとめ
最後に、本記事の要点を箇条書きで振り返ります。
- スリランカは“年中どこかがベストシーズン”のダイビング天国。11~4月は南西海岸、5~10月は北東海岸で潜るのがおすすめ。水温は通年27~30℃と暖かく快適です。
- 生物多様性が極めて豊かで、カラフルなサンゴ礁から大物回遊魚まで楽しめます。ウミガメやリーフシャークはもちろん、季節によってはクジラやイルカも観察できます。
- 各地に魅力的なダイブスポットが点在。南西部ヒッカドゥワは浅瀬のサンゴとウミガメ、ウナワトゥナは沈船と珊瑚、東部トリンコマリーはピジョン島の楽園や海底遺跡など、それぞれ特色ある海中景観が待っています。
- 沈船ダイブも充実。コロンボ沖には十数隻の沈船が眠り、東部では世界初の空母HMSヘルメスの壮大なレックが横たわります。南東沖グレートバスでは財宝船の遺構もあり、上級者にはたまらない探検機会です。
- シュノーケリングでも十分楽しめるスポット多数。ヒッカドゥワやピジョン島では初心者でも熱帯魚やウミガメと触れ合えます。シュノーケリング用具は現地レンタル可ですが、安全管理と環境保護をお忘れなく。
- 現地ダイブショップは主要リゾートに点在し、講習やファンダイブを提供。日本語対応は基本なしなので英語が不安な場合は日本語ガイド手配も検討を。Cカード保有者は忘れず持参し、安全に配慮して楽しみましょう。
エキゾチックな島スリランカの海は、きっと想像以上の感動と発見を与えてくれるはずです。初心者ダイバーもベテランも、それぞれのスタイルでスリランカのダイビングを満喫してください。
透き通るインド洋の海中で出会う景色は、一生の思い出となるでしょう。さあ、安全に気をつけて、思い切り海の冒険を楽しんできてください!